ついに魚は姿を見せた。(版画小説【老人と海】)

Posted 2022-09-23

小舟の前の海面が盛りあがり、ついに魚は姿を見せた。が、まだ出きらない。背の両脇から水がざあっと流れ落ちる。太陽の光線を受けて肌がきらきら輝く。頭と背は濃い紫色だ。脇腹に幾筋もの広い縞が走り、薄紫色に照り映えている。
/アーネスト・ヘミングウェイ : 福田恒存訳