私の食物誌

Posted 2011-01-08

吉田健一。飲み、食べ、また飲む、飲食にまつわる随筆。あれが旨かった、これは旨いと云うようなグルメ本ではない。この本を読んで勇んで出掛けるのではなく、ふらりと立ち寄って巡り合った口福に感動したとき、ああ、吉田健一の本にあった味はこれであるか、と思い出す。「春さんにぶつ切りの蛸を頼むような仲秋名月」。これをアートに置き換えると、岬の先に静かな水平線が見えて、ああ、あの写真みたいだ、と美術館の壁にある作品を思い出す。  こんなときは肩の力が抜けた自然体であろう。自然が芸術を模倣する。