富士

Posted 2012-09-01

武田泰淳。この長編小説の冒頭の「神の餌」と題された序章で、著者は早くも巨大な問題に触れている。山麓に住む著者は、森林に棲むリスには餌をやり、屋内のネズミには殺鼠剤をまく。なぜリスが可愛くてネズミが可愛くないのか?片一方は生かそうとし片一方は生かさまいとする選択は誰がするのか?リスやネズミの食べ物を、「餌」や「罠」というのは誰の視点なのか?鬼ごっこを専攻する私には計りかねる問題ですが、著者の「人類は有機物を食している限り一切の救済を語る資格はない」発言に、鬼は同意します。