カフカ寓話集

Posted 2012-10-20

池内紀=編訳。「カフカ伝説」というものがある。発表するあてのない小説をこつこつ書きつづけて、無名のまま自らの死が近づいたとき、友人に作品一切の焼却を依頼した。この友人はカフカの依頼を裏切った。そのため私たちはカフカを読むことができるのだ。しかし、カフカは知っていた。友人が裏切ることを。「ほんとうに自分の著作の消滅を望む者であれば、その仕事を他人に依頼したりはしない」(ボルヘス)。自分の死後の作品の運命をも演出したカフカ。この本を読む私たちは、カフカの死後小説の登場人物の一人です。