一日一生

Posted 2018-12-21

シューホフは、すっかり満ちたりた気持ちで眠りに落ちた。きょう一日、彼はすごく幸運だった。営倉へもぶちこまれなかった。自分の班が《社生団》へもまわされなかった。昼飯のときはうまく粥をごまかせた。班長はパーセント計算をうまくやってくれた。楽しくブロック積みができた。鋸のかけらも身体検査で見つからなかった。晩にはツェーザリに稼がせてもらった。タバコも買えた。どうやら、病気にもならずにすんだ。
一日が、すこしも憂うつなところのない、ほとんど幸せとさえいえる一日がすぎ去ったのだ。

【イワン・デニーソヴィチの一日】ソルジェニーツィン